えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

2011-01-01から1年間の記事一覧

レセ・パセ 自由への通行許可証

Laissez-passer, 2002 ベルトラン・タヴェルニエ監督。 これまで知らなかった作品を、たまたま見つけて鑑賞。これがすこぶる素晴らしい。 第二次大戦中占領下のフランスにおいて映画を撮り続けた男達の物語。 主役は二人のシナリオ作家で、一人はレジスタン…

綱渡りのドロテ

モーリス・ルブラン、『綱渡りのドロテ』、三好郁朗訳、創元推理文庫、1986年 Dorothée danseuse de corde は1923年発表の由。 「訳者あとがき」にも述べられているように、リュパンものとの関連が色濃い作品で、 この度初めて訪れてその見事なお仕事ぶりに…

気疲れの日々

はじめはいろいろ疲労がたまる。 16日マラルメ『賽の一振り』ひとまず読了。 かりに賽が振られても、偶然は廃棄されず、ただ場所のみがあるのであるが、 もしかすると遥か天上に北斗七星のような星が瞬きはじめるのかもしれず、 つまり地上では成し遂げられ…

研究者の翻訳

久しぶりに大きな声出すと、喉が(というか口が)渇くなあ、 と、桜を眺めながら思う日々。 読みかけの本の中に厳しいお言葉があったので、引いておく。 吉川幸次郎を批判するのは、何といっても、「名訳」を企図しない文学研究者の筆頭的存在と、彼を目して…

あらためてマンデス

仕事開始の前日。多少なりと緊張します。 たびたび名前が出てきたので、『エコー・ド・パリ』のマンデスの回答も訳しておこう。 Ce qu'il faut admirer avant tout, me semble-t-il, en Guy de Maupassant, c'est le parfait équilibre entre le pouvoir et …

バルタザールの風変わりな毎日

モーリス・ルブラン、『バルタザールの風変わりな日々』、三輪秀彦訳、創元推理文庫、1987年 La Vie extravagante de Balthazar は1925年刊の由。 冒険など存在しない、という「日常の哲学」を唱える青年バルタザールの身に、 次から次にとありえないような…

ルブランとチェム・チュミネ

モーリス・ルブランも描き直してみました。 ところで今日は一日「チム・チム・チェリー」を口ずさむ。 チムチミニー、チムチミニー、チムチムチェリー というのが呪文のようで楽しいのだけれど、 (チムニーが煙突で、これは『メリー・ポピンズ』の煙突掃除…

マルセル・バイヨとアドルフ・レッテ、とマラルメ

ようやく最後まで来る。 La paralysie générale vient de foudroyer une des plus belles intelligences de ces temps-ci. Guy de Maupassant, héritier direct de Gustave Flaubert, ne fit que passer parmi les disciples de Médan, et de suite, il cher…

ピエール・キヤールとレオン・デシャン

Parmi les écrivains strictement naturalistes, seul peut-être, M. de Maupassant eût le sens de la beauté verbale et du rhythme supérieur : il parle quelque part du mystérieux frisson qui saisit les initiés à la lecture de telles strophes de…

疲れた時にはヴェルレーヌ

エコパリのモーパッサンについてのアンケート若者編は、 あと四人ばかり残っているけど、今日はお休み。 思ったよりも大変であった。 ちょっと前に描きなおしてみたヴェルレーヌ(1844-1896)でも掲載し、 詩を一遍訳してみる。拙い訳で恐縮です。 Nevermore (…

モーリス・ポッテシェールとルイ・ル・カルドネル

Parmi les fausses monnaies, sa langue claire et grave sonnait la loyauté ; c'est par elle qu'on entendra vivre tout ce que l'écrivain a écouté de la vie. Les élections académiques, le message des « Cigognes », l'assaut des mages ne console…

モーリス・ボーブールとピエール・ヴェベール

Maupassant eût continué son œuvre qu'il eût achevé de quitter ces malheureux naturalistes, qui n'ont décidément que des fonctions !... Il eût laissé leur domaine aux sciences physiques destinées à l'amélioration des calorifères, et eût mon…

ジュリヤン・ルクレール

J'aime la prose lorsqu'elle est composée par les poètes. Je n'aime pas les vers lorsqu'ils sont l'œuvre d'un prosateur. Voilà pourquoi je n'aime ni la prose, ni les vers de M. Guy de Maupassant. – Julien Leclercq. (L'Écho de Paris, supplém…

ルイ・デュミュール

シャルルさんお返事ありがとうございました。 お陰様で束の間いい夢が見れました。 おっしゃるとおり、モーパッサンのたくさんの短編はその多様性にこそ驚かされます。 ので一冊でその多様な面を窺えるように、なるべく色んなタイプの作品を取り上げたい、 …

ロマン・クーリュスとアンドレ=フェルディナン・ヘロルド

新学期を迎える、が、とりあえず変わらぬ日。 だんだんおざなりになって、既に飽きてきているのがばればれではあるが、 本日の宿題。 Guy de Maupassant tient dans mes actuelles lectures une place si modique ! Serais-je même coupable d'avouer que je…

マンデスとトリスタン・ベルナール

カチュール・マンデス(1841-1909)ってどんな顔なのかなあ、 とか思ってしまったのが運の尽き。 描いちまったんだな、これがまた。 うーむ、さすがはパトロン。 にしてもヒゲと髪に相当てこずる。 頼むから剃ってくれ、刈ってくれ、と言いたい。 せっかくなの…

モーパッサン短編集を編んでみる

29日、ベケットとマラルメとジャリの日@六甲。 シャルルさま、お初にお目にかかります(よね?) 嬉しくも悩ましいご質問をどうもありがとうございました。 私自身、前々から自分の「モーパッサン短編集」を編むとしたらどうするか、というのを宿題に抱えて…

アンリ・マゼルとルネ・タルディヴォー

引き続いて、エコパリのモーパッサンについてのアンケート。 終わらないー。 L'étonnant n'est pas de rappeler Gavarni ni Edgar Poë, mais les deux. – Henri Mazel. (L'Écho de Paris, supplément illustré, 8 mars 1893.) 驚くべきは、ガヴァルニやエド…

スチュアート・メリル

Guy de Maupassant est un auteur prisé des commis-voyageurs. Ses nouvelles se laissent lire d'une gare à une autre ; ses phrases courtes sont rythmées aux cahots des wagons, et ses personnages, qui sont ses admirateurs, se retrouvent à chaq…

超男性

ジャリ、『超男性』、澁澤龍彦訳、白水社、1975年(1978年6刷) 初めて読む。驚いた。原作1902年。 前半に出てくる「永久運動食」を食う自転車乗りと汽車との一万マイル競走は、道具立ての古さにもかかわらず、今でも新鮮さを失わない見事な疾走感。 SFとは…

ジャリとミュルフェルド

エコパリのモーパッサンのアンケートに ジャリの名前は残念ながら無いのだけれど、 いささか故あって描く。 ジャリだからいいか、ジャリだし、という適当な配色。 不知火どの曰く「昇天しそう」な感じとか。 お元気でいらっしゃることを祈っております。 宿…

エミール・ベニュスとタデ・ナタンソン

5日間外出して労働。まだ寒くても春は近い。 Ce monde-ci, où nous passons, si peu selon la Nature... Ces hommes-ci, si peu selon l'Humanité... Et tant d'âmes vaines ont circonvenu les âmes instinctives, que nous traversons la vie comme des ét…

レオン・ブルムもいた

粛々と自分の勤めを果たすのみ。 La crainte de paraître emprunter leur indulgence au pathétique des circonstances aura détourné quelques-uns de mes amis d'exprimer une admiration ou même une sympathie. J'avouerai que j'aime beaucoup Maupassa…

なんとモーリス・ピュジョ

あちらやこちらで引っ越しのお手伝いが続く。 ところで前言を翻しまして、 カミュのあれはハンフリー・ボガードであり、つまりハードボイルドである。 うむ、そうに違いあるまい。 で、大人しく宿題をこなす。 Maupassant est un tempérament. Il a traité l…

描いたようなマルスリーヌ

今日は宿題をお休みし、 趣向を変えてマルスリーヌ・デボルド=ヴァルモール。 絵に描いたような、て元が絵なので当然ですが。 ジョルジュ・ポンピドゥーのアンソロジー詩集には、 彼女の作が2篇載っていて、一個はもちろん「サアディの薔薇」。 他方は « Qu…

やっとルナール

バルビュスは駄目でも、ルナールならいいんかい。 没後百周年だった昨年、結局ルナールの名を聞くことが あまりなかったように思うのだけれど、どうなのだろう。 日本でこそ、何かあってもよかったかもしれない、という気もする。 では宿題。すでに疲労ぎみ…

そしてバルビュス

研究会、同窓会と予餞会。 Maupassant a été le plus réaliste des réalistes. Il a compris admirablement le style qui n’est que la façon artistique de voir la pensée et qui n'est rien par lui-même. Il me semble au-dessus de Flaubert, qui mêlai…

次いでモークレール

土佐を満喫して帰る。 四万十川最高。足摺岬感動。 おもむろに一句。 これやこの鰹美味しや土佐の春 感謝のつもりでカミュを描きなおす。 カミュには悪いが、やっぱりこれはヤクザだろう、と。 では本日も宿題。 M. Guy de Maupassant écrivait bien. Il voy…

次がヴィエレ=グリファン

ああ、もう2月が終わってしまう、と、毎年言っているような。 昨日マラルメ。『賽の一振り』もほぼ終わりへ。 最後の手前の頁。主幹文を終えて「後奏曲」とでも呼びたいところか。 たとえサイコロを振ったとしても偶然は廃棄されず、 「場所以外の何も起こら…

お次はヴァレット

おもむろに一息で読んだ本。 出口裕弘、『辰野隆 日仏の円形広場』、新潮社、1999年 半ばまではとても面白い。後半はやや「ふくらまし感」ありか。 というか、この本全体がそれ自体として、日本における仏文学に携わってきた人の思いの記録ということで、 こ…