えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

『赤と黒』について今思うこと

スタンダール『赤と黒』、小林正訳、新潮文庫、上下巻、1957-58年(上巻、2017年104刷、下巻、2019年88刷) 今、「『赤と黒』は本当に傑作なんですか?」と聞かれたら、どう答えよう。 ひとつ言えることは、スタンダールは職業作家ではなかったということだ…

『郵便配達は二度ベルを鳴らす』/-M-「スーパーシェリ」

これも「読んだ」という記録に。 ジェームズ・M・ケイン『郵便配達は二度ベルを鳴らす』、田口俊樹訳、新潮文庫、2014年 原作発表は1934年。道路沿いの安食堂に飛び込んだ青年フランク(語り手)は、ギリシャ人の店主に店で働かないかと声をかけられる。フ…

『情事の終り』/クリストフ・マエ「魅了されて」

読んだという記録のために。 グレアム・グリーン『情事の終り』、上岡伸雄訳、新潮文庫、2015年 この本とジッドの『狭き門』はまだ読まれているようだけれど、そのことは私には不思議に思える。『情事の終り』は決して分かりやすい話ではないように見えるだ…

『文学入門』/クリストフ・マエ「キャスティング」

推薦書リストの話の続き。 最近、巷の書店で出会って、おおまだ現役だったのかと驚いた本。 桑原武夫『文学入門』、岩波新書、1950年1刷(63年31刷改版、2016年87刷) 「文学は人生に必要である」と堂々と述べるその言葉がなんとも眩しい。1950年にはまだテ…

『教養のためのブックガイド』/クリストフ・マエ「人々」

以前より、推薦図書リストのようなものを探しているわけだが、そうした類のものが難しいのは、そもそもからして多分に教育的意図をもったものである上に、ややもすると威圧的なものになってしまうという理由があるように思われる。 『教養のためのブックガイ…

『危機に立つ東大』/ガエル・ファイユ「僕は旅立つ」

タイトルを見て最初は「石井先生がそんな本書いちゃだめー」と思ったが、ファンなので黙って購読。 石井洋二郎『危機に立つ東大 ――入試制度改革をめぐる葛藤と迷走』、ちくま新書、2020年 実際に読んでみれば、もちろんこれは時流に乗った浅薄な煽り本などで…