えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

三つの目

モーリス・ルブラン、『三つの目』、田部武光訳、創元推理文庫、1987年
Les Trois Yeux は1919年雑誌掲載、翌年単行本の由。
それはつまりアルセーヌ・リュパン絶頂期に、一方でこの純然たるSFが書かれたということで、
なんでおもむろにSFなのか文脈が分からないところが興味深い。
ネタばれになるのであんまり書けないが、映画が発想のヒントになっているところ、
ルブランの新しいものへの関心は旺盛である。
途中でランスの大聖堂がドイツ軍に爆撃される場面があり、
そこになんとドイツ皇帝ヴィルヘルム2世が登場するのが凄い。おお『813』よ。
アクチュアルというか腹癒せというか、なんだか分からないけど。
SFにして冒険小説、主筋には断固として恋愛ありで、
ここにも「殺人」のタブーがついて回ることもメモしておきたい。
○○○もしかし随分と暇な人達だよな、と思わないでもないが、
しかしなかなかよく出来ているのではありますまいか、このお話は。
ルブラン異色の一冊として、色々興味が尽きません。