えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

女の決闘

話が出たので「走れメロス」を読む。これはほんとに良い小説。
それからぱらぱら読み耽ったのが「女の決闘」『太宰治全集』3、ちくま文庫、2001年。
太宰という人はつくづくうまいなあと感心。
19世紀ドイツの無名作家の作品(鴎外訳)を土台に、人物の変転する心理を描き出す
というのは、考えてみれば芥川の衣鉢を継ぐような仕事ではある。

(前略)その間に私の下手な蛇足を挿入すると、またこの「女の決闘」という小説も、全く別な廿世紀の生々しさが出るのではないかと思い、実に大まかな通俗の言葉ばかり大胆に採用して、書いてみたわけであります。廿世紀の写実とは、あるいは概念の肉化にあるのかも知れませんし、一概に、甘い大げさな形容詞を排斥するのも当るまいと思います。人は世俗の借金で自殺することもあれば、また概念の無形の恐怖から自殺することだってあるのです。
(222ページ)

なるほど。