えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

マイケル・K

J・M・クッツェー『マイケル・K』くぼたのぞみ訳、ちくま文庫、2006年。
絶対的に自由であろうとすること、あるいは可能な限り関与から遠ざかろうとすること。とその苛酷さ。
そういう主人公の生き様が否応もなく暴力の存在を暴かずにはいないということ。
私の頭で理解できたのは、たぶんそういうこと。
270ページの内の180ページまでを占める第一部の行くあての全然見えない展開はなかなかしんどく、
一時中断してしまったのだけれど、第二部にきてなるほど、ここへ行き着くことが目的だったのね
となんとなく納得する。しかしこのお医者さんはよく分からないといえば分からないんだけど。
なんにせよ後は一気読み。相変わらず大変しんどい作品なのは、マイケルも医者も、読者が簡単に
感情移入できるような人物では全然ないからだと思う。そんなやわなもんじゃない。
それにしても彼の作品には「色気」がないこと、私の中ではフォークナーと双璧を成す。
まじめすぎるんでないの、とはしかし、やわな人間のただの愚痴というものでありましょうか。