えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

大西忠雄に敬意を表す

ところで春陽堂版3巻本の『モーパッサン全集』は今いくらぐらいなのだろう
と思って探すと、ネット上で二件、2万6千円なり。これはいいお値段だ。
もちろん保存状態は大事で、以前真白な紙箱のを古書店で見たことがあって
すげーこんな白かったのね。と思った記憶があるけれど、その時いくらだったかは
忘れました。私が入手したのは思えばもう十年も前のこと。あの頃はまだそんなに
高くなかったと思うのだけれど。密かに値上がり中なのかもしれませんよ。ま、
出てからもう40年も経っているのである。翻訳者は二人を除いてみんな明治生まれだったのだ。
というわけで久し振りに3巻をとりだしてつらつら眺めていると、
巻末の大西忠雄による「モーパッサンの生涯と作品」は大変充実した内容であることに
今さらながら気がついたのだった。プレイヤッドの出る前、ジュネーヴ版の書簡集の出る前の
ことであるから、今となっては情報の古さは確かに否めない。アルマン・ラヌーの伝記の翻訳が出た
翌々年であるから、それでも一通りの情報は揃っていたわけである。この評伝の偉いところは
モーパッサンの書簡をたくさん訳して紹介しているところで、おおこんなに訳されていたのね
と恥ずかしながら再確認。エラクリウスが「エラクレス医師」になってたりするのはご愛敬で。
とにかくこれは立派なお仕事であった、ということが言いたくなったのである。
ところで巻末の索引を見る限り、この全集はオランドルフ版とコナール版をもとにしたもので
あるらしい。リブレリ・ド・フランス版も参照していれば、あるいはエラクリウスも入ったかも
しれないがどうだったか。戯曲も入っていないとこも残念といえば残念。それでも詩集と
旅行記3巻、長編6編に、中短編はぜんぶで303(かな。間違ってるかも)編収録で、これが
コンパクトな3巻本で読めるのだから、これはもうお買い得でしょう。
と今さら宣伝したところでどうなるものでもないんだけど、ま、そんな話。