えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

独歩『病牀録』

 外國の作物にて余が耽讀せしは、露のツルゲネーフ、トルストイ、佛のユーゴー、モーパツサン等のなり。しかも余の思想上の感化は、英のカアライル、ウオヅオース等より、作品上の感化は、ツルゲネーフ、トルストイ、モウパツサン等より享受せり。
(『病牀録』、『國木田獨歩全集』、第9巻、学習研究社、1969年(2刷)、76頁)

「作品上の感化」という言葉の意味は曖昧ではある。それでも「運命論者」なんかを読むにつけ、
短編小説の「技法」(構成とか語りとか)を西洋の小説に「学んだ」ということが窺われる。
たぶん「模倣」ではなくて。
『病牀録』は「国木田独歩述 真山青果編」ということで、真山がメモを元に再構成した談話。
「兎に角、早く癒つて書きたい。」(88頁)というような言葉を目にするのは痛ましい。
もう一箇所だけ引かさせてもらって、就寝とする。

 文章の要訣は何ぞ。言葉を短くせよ、言葉を簡略にせよ、言葉を平易にせよ、これだけにも盡せば盡きるなり。(71頁)

国木田独歩は短編小説の極意に達していた作家だった、ということだと思う。