えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

東京オリンピック

東京オリンピック』、総監修 市川崑、1965年
とりあえず「劇場公開オリジナル版」。
競技よりも選手個人とおそらくはその孤独に焦点を当てているので、
必然的に団体スポーツは(女子バレーを除いて)蚊帳の外の感がある。
ま、今さら記録か芸術かとか言う必要もない。
開会式までの前半30分はとりわけよく出来ていると思うし、全体を通して
一人の映画監督の目を通して見られたオリンピックが見事に
描かれていることに感心する。シーンの入れ方も音響の使い方も
大変よく考えられていて手が込んでいる。
今日、スポーツ映像はもっぱらテレビの報道によっているわけで、
アナウンサーの言葉なしにじっと選手の姿を追いかけるという
経験は実のところ大変少ないのだなあ、ということを、
この映画を観ていてしみじみ思った。
その意味で、今日普通のテレビ報道以外のスポーツ映像のあり方
にはまだ可能性と、それなりの需要とがありうるのではないだろうか
という風に思ってもみる。
もっとも、本映画の音響はほとんどが「後入れ」であるそうで、
後撮りのシーンも含まれているとのことであり、
優れた記録映画ほどただの記録ではなくなってゆく、
というのもなかなか意義深い話。