えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

イエロー・フェイス

村上由見子、『イエロー・フェイス ハリウッド映画にみるアジア人の肖像』、朝日選書、2003年(4刷)
実にたくさんの映画が挙がっていてまことに労作。
早川雪州からジャングルの猿から気がつけば経済大国まで、映画は全然見たことなくても
話自体は非常によく分かって、その意味では予想範囲内では一応ありつつも、
『チート』とかフー・マンチューとかミスター・モトとか、
そんなことになっていたのね、という驚きだらけで、長い間欧米人が
釣り目のアジア人を演じていたという歴史にもびっくりする。

 だが多くの場合、映画の作り手にじつは悪意はなかった。受け手である大衆もまた映画を娯楽として享受していたにすぎない。それだけにハリウッドの描く東洋人の姿には、アメリカ自身がアジアに抱いた想念が、ナイーブかつストレートに投影されている。たとえそれが敵意や誤解に満ちた作品であったとしても、そこには時代の情勢が反映し、大衆感情が息づいていることを見落としてはならない。映画に出てくる東洋人像とはじつは東洋人の姿なのではなく、アメリカのアジアに対する目線を示すものであり、さらに言えばアメリカ自身を語っているにほかならない。(5-6頁)

まったくその通りであると納得。読み応えある良書でした。