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えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

学会誌お勧め論文2本

おもむろに、読みかけの学会誌のうちの2本のご紹介。
どちらも知ってる方のですけどね、よいものは褒めねばなりません。
辻川慶子、「ネルヴァル神秘主義再考 ―『幻視者たち』「ジャック・カゾット」における引用、歴史、断片の詩学ー」、『フランス語フランス文学研究』、no 94、2009年3月、p. 93-105.
安藤麻貴、「アルベール・カミュ「背教者」における追放の場の創造」、同誌、p. 147-159.
この二本に(偶然)共通するのは、どちらも作品のもとというか素材というかになった
資料に関する新発見があることで、それはもちろんそれだけで価値があることにせよ、
それだけでは面白くないのであって、大事なことは両者ともに、それぞれの資料が使われていた
というその事実から、ネルヴァル、カミュそれぞれの作家の意図、技法、そして詩学(の一端)の
解明へときっちり論理が紡がれているところにある。
私の記憶する限りではネルヴァルのカゾット論なんて読んで素朴に面白いものではない
んだけど、おまけに本文の8割から他人の著作の引用で成っているというのにも驚くが、
にもかかわらずこの作品の、ネルヴァル文学における位置づけを明確にした前者の
論はお見事でしょう。一方、「背教者」の元にはイブン・バットゥータがあった
という後者の発見は快挙であり、そこからカミュが「追放」の空間を創った意図
を説いていく論述は明快である。
お二方の今後のさらなるご活躍に期待します、というのはこの業界の決まり文句みたいな
もんだけど、いやもう本当に。はい。