えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

ユレと、ズボン伸ばし

ジュール・ユレ;Jules Huret

先週は怒涛の一週間。
26日がマラルメで、28日が会議。
へろへろのまま、逃避で『1Q84』を再読。続きが待ち遠しいことよ。


最近、お二方に続けて、
ジュール・ユレのアンケートのモーパッサンの回の初出はいつぞや?
というご質問をいただく。
いちおう結論としては、新聞初出は無い模様、ということであるが、
これも何かの啓示というものか、と思い立つ。
ジュール・ユレ 『ギ・ド・モーパッサン氏』
ジュール・ユレの『文学の進化についてのアンケート』所収の
モーパッサンのインタヴューの翻訳です。お読みいただければうれし泣きます。
さしもの私も、ユレの顔なぞ描いて喜んでいるわけではなく(いや本当に)、
何をやっているのやら。
でもわりかし描きやすくて楽しかったけど。
ヒゲの尖り具合が絶妙です。


1891年春、病の進行明らかなモーパッサンの姿がなんとも痛ましいインタヴューではあり、
後年の彼が社交界好きの「スノッブ」と噂されていた、というのもなにやら物悲しい。
フロベールは文学について公に語ることを拒絶した。
モーパッサンは時評文の中ではけっこう文学について好んで語っているのだけれど、
後年、というか早すぎる晩年になって、亡き師の教えに意固地に取りつかれるようになる。
『メダンの夕べ』再販に著者の写真が無断で掲載されて激怒するのも、この頃のことだ。
文学については語らない、というのにはトゥルゲーネフの影響もある。
文学について語らない=文学的思想が無いという誤解が、ここから世に広まり始める
ことになるのは、なんとも皮肉な運命ではあった。


それはそうと、インタヴューの中に tendeur というものが出てくる。
要するにズボンを引っ張って皴伸ばしする器具には違いないのだけれど、
果たしてそれはいかような代物なのか。
これは単なる「ズボン吊り」なんでしょうか。
調べがつかずに「ズボン伸ばし器」とか訳して誤魔化しております。
どなたかご存じでしたら、ご教示ください。