えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

サラエボの花

Grbavica, 2006
ヤスミラ・ジュバニッチ監督。ベルリン金熊。
サラエボのグルバヴィッツァに暮らすシングルマザーのエスマには、12歳になる娘サラがいる。
ナイトクラブでウェイトレスをしながら、娘の修学旅行費用200ユーロを得るために苦労している。
一方で、父親は戦争で亡くなったシャヒード(殉教者)のはずなのに、
その証明書を出そうとしない母に、娘の苛立ちは募るばかり・・・。


ほんの十数年前にそういうことが実際にあった、という現実の裏打ちがあるということ。
エスマ役ミリャナ・カラノビッチの疲れはてたあてどのない視線。
事実を世界に知らせたいという強い意志がこの作品を作らせたに違いなく、
その意味で、作品の目的はドキュメンタリーとすごく近いところにあるけれど、
それを母娘の物語として語ることで、具体的で個別的な痛みを
生きた体験として伝えることができる。
それがフィクションの意味であり、その力。
サラが自分の髪の毛を刈る場面の痛ましさ。
最後の場面に、それでも希望を見てとることができるのだろうか。