えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

四川のうた

二十四城記/24 City、2008
賈樟柯ジャ・ジャンクー)監督。
四川省の国営420工場の土地が、民間の不動産業者に売却されることになり、
工場は取り壊されて高層ビルに建て替わる。
かつてこの工場に関わった人達へのインタビューで構成されたこの作品は、
一見ドキュメンタリーなんだけど、実は8人の内4人は本物の役者さんで、
なんと、インタビューを受けて過去を回想する、という演技をしているのである。
が、これが実によく出来ているので、何も知らない私は最後までよくできた
インタビューやなこれどないなってんのかいな。と思って観てしまう。
というわけで疑似ドキュメンタリーという不思議な作品なのであるが、
生のインタビューでは断片的になるだろうところを、
(再)構成された語りであるがゆえに、しっかりはっきり語ることができる
というところにその利点はたしかにあるし、「語る」というのが一つの劇的行為として成立する、
という事実に改めて気づかされもする。
それにしてもまあ地味な映画ではありますが、
工場の存在自体が、文革を経て改革開放に至る中国現代史の象徴ともいえるわけで、
激動の時代を生きてきた市井の人々の姿を通して、中国の過去と現在、未来について
問いかけることにしっかり成功している、よい映画だと思いました。