えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

パリ20区、僕たちのクラス

Entre les murs, 2008
監督・脚本ローラン・カンテ、原作・脚本・主演フランソワ・ベゴドー
ZEP(教育優先地区)の中学校の様子をドキュメンタリー風なタッチで描いた、パルムドール受賞作品。
とりあえず初見の印象としては、生徒達の演技があまりに自然に見えることに驚き、
ディテールにリアリティが溢れているので、いかにもこんなんなんだろうなあと
思わせる説得力に唸り、
結果的にぜんぜん美化されてないので、その殺伐たるさまにおののき、
観終わるまでカタルシス皆無であって、
いやはや私には三日と勤まるまい、としみじみ思った。大変だ。


とりあえず思春期・反抗期真っ盛りの子供たちの上に、
移民に関する社会階層の問題が色濃く影を落としていて、
まこと学校とは社会の縮図であるよと思いもしつつ、
いやそれにしても大変だなあ。


フランスでの議論を少しばかり眺めてみると、
ZEPの現場がリアリティーをもって写し取られているという点に関しては
おおむね同意がなされつつ、ベゴドー/マランの教師像については、
とりわけ現場の先生達から異論の声があがったもののようである。
映画の中で国語教師マランは、生徒達に近づこうとし、
とりわけ彼らに語らせ、対話することに努力するのであるが、
(そのことがあんまり良い結果を生むわけでもないところを
ドライに描いているところが、この映画の大したところだけれども)
それは伝統的な教師のあり方とは異なるものであり、
教師の「権威」のありようについて議論が交わされた模様であって、
なるほど、この映画は決してドキュメンタリーではなく、
つまるところは一つの視点から見られ、作られた「作品」であるという事実を、
見過ごしてはいけないものと、なんとなく納得する。
しかしまあ大変だよなあ、とため息つくより他にどうしようもないのだけど、
教育について色々と考えさせる刺激的な作品であるのは確かでありました。