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えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

モーパッサン、アグレガシオンの課題に

一月前。おお大変だ。


すでに旧聞に属するけれども、
10月号の『マガジン・リテレール』はLe Mystère Maupassant「謎の人モーパッサン」と題する
モーパッサン特集号であった。
これは来年のアグレガシオン(中高等教育教授資格試験)の課題図書の中に、
『メゾン・テリエ』と『昼夜物語』が入った故の企画。
今月から関連研究書がごろごろ出始める模様であるが、その第一弾と言えましょう。
バカロレアとかアグレガシオンの課題に入るとそういうことになるのだが、
どこまでが本気で受験生向きなのかよく分からないところがあり、
それをタネに話題にして盛り上げたいという裏事情があるようでもある。
いずれにせよ、この教育制度と研究者業界と出版業界との麗しき(?)三つ巴によって、
フランス文学研究は恒常的に賦活されている、という側面は確かにある。
可哀そうなのは受験生のみというべきか。
なんにしてもこの強制的な制度は(その筋には)移入しがいのあるものではありますまいか。
来年のセンター試験の課題は夏目漱石虞美人草』ですよ、と一年前から煽ることによって、
全国的に一年中、なにかしらどこかしらで『虞美人草』が話題になるのである。
本屋さんと国文の先生と、ネタにお困りのマスコミの方にとって、いい話じゃありませんか。
可哀そうなのは受験生のみである。はは。
閑話休題


マガジン・リテレールがモーパッサンの特集するのはたぶん三度目(1980年、93年についで)。
この雑誌の特集は、当代の研究者による今の研究状況総覧のようなもので、
特に新しい話があるわけではないのだけれども、
それでも正直、今回の号はいかにも新鮮味に欠けるところがちと寂しい。
フロベールショーペンハウエル、娼婦、あるいはコントとヌーヴェルに違いはあるか、
等々、これは意図して受験生向けの基本情報に徹したということなのだろうか。
そう解しておきたいところではあるけれど。
ご本尊 Louis Forestier 先生が原稿を寄せておられるのが嬉しいのと、
Timothée Léchot というスイスの先生が、
『ピエールとジャン』冒頭「小説論」でモーパッサンが長編について語っていることは、
彼の多分にジャーナリスティックな中短編に応用させるべきではない、
と明言しているのは、ちと目新しい見解であった。よう言うた。


付け足しの話。
ジャン=クロード・ドゥマリ、長野督、西山教行、ルイ=ジャン・カルヴィエ、『ヌーヴェル・シャンソンで楽しむ現代フランス語スケッチ』、第三書房、1996年
は90年代半ばのポップス34曲に解説とCD2枚ついた、とても良い本なのであるけれど、
いかんせん、15年経った現在では風化が著しい。
私が名前を知っていたのがパトリシア・カースとジャン=ジャック・ゴールドマンとMCソラーだけであるのは、
8割方は私の物知らずに因るものであるにせよ、ちと選択が水もの過ぎたんではなかろうか。
流行りものを取り上げるのは難しいね、というお話でした。
2000年代版を出してくれたら、1万円でも私は買うんだけども。