Zeina Abirached, Mouton, Cambourakis, 2012.
『オリエンタルピアノ』がすごく良かったので、同じ著者の別の本を覗いてみた。
ゼイナ・アビラシェドの『ムートン(羊)』は、正確にはBDというよりも絵本であり、もともとは、国立高等装飾美術学校在籍時に制作した3分の映像だった。
この映像は(ほぼすべて)白黒だが、絵本ではカラーが足されている。内容はほぼ同じだが、絵本のほうが多少膨らませてある。くせ毛に悩む主人公の女の子(=著者)は、床屋に行っても期待した結果がえられない。まるで自分は頭に羊を飼っているようだと思いながら、彼女はこの羊になんとか言うことを聞かせようとあれこれ試すも、うまくいかない。やがてはあるがままの自分を受け入れるに至る、という話である。彼女は羊を「飼いならす」ことができるようになるのだが、そこで使われる apprivoiser という単語には、『星の王子さま』が遠く呼応しているのかもしれない。
黒を背景に描かれているアビラシェドの絵は、ここでもやはり大胆であると同時にとても細やかだ。ページを繰るたびにはっとさせるものがあり、同時に、一頁一頁が丁寧に作られているという印象を受ける。そして構図や色使いのそこここに、著者のセンスの良さがしみじみと感じられる作品に仕上がっている。
ヴァネッサ・パラディ、2013年のアルバム Love Songs に戻って、"Mi Amor"「ミ・アモール」。歌詞はぜんぶフランス語。
Oh fais-moi changer encore de décorJe m'en fous fous fousDe ces problèmes tant que de moi tu es fou
("Mi Amor")ああ また舞台装置を変えてどうでもいい、どうでもいい、どうでもいいそんな問題 あなたが私に夢中な限りは(「ミ・アモール」)