えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

フランス映画

『アヴリルと奇妙な世界』/「そして明日は?」

ジャック・タルディ ビジュアル総監修、クリスチャン・デスマール、フランク・エキンジ監督『アヴリルと奇妙な世界』、2015年 冒頭は1870年、ナポレオン三世とバゼーヌが科学者ギュスターヴ・フランクランのもとを極秘に訪れる。ギュスターヴは不老不死をも…

『ディリリとパリの時間旅行』

『ディリリとパリの時間旅行』、ミッシェル・オスロ監督、2018年 待望のオスロ監督の新作を映画館にて鑑賞、感無量。 時は1900年、万国博覧会の「人間動物園」に出演していた、ニューカレドニアからやってきたカナカ族の少女ディリリは、なんと故国で(当時…

『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』/バルバラ「褐色の髪の女性」

『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』、バンジャマン・レネール、ステファン・オビエ&ヴァンサン・パタール監督、2012年 これについては以前からぜひ一言記しておきたかった。 「くまのアーネストおじさん」は、ガブリエル・バンサンによる絵本の…

映画『女の一生』の中の詩

ステファヌ・ブリゼ監督『女の一生』(2016)の中には詩が朗読される箇所があるのだが、その詩がモーパッサン自身のものであると、パンフレットの永田千奈氏の解説に書かれていて「おお、そうだったか」と思う。そりゃあ、もちろん気がつきませんでした。 実際…

映画『女の一生』(ステファヌ・ブリゼ監督)鑑賞報告

映画『女の一生』オフィシャルサイト 12月9日(土)より岩波ホールなどで公開される、ステファヌ・ブリゼ監督『女の一生』を試写会にて鑑賞。その感想を記しておきたい(というのはつまり宣伝と無縁ではないと、前もって記しておこう)。 この映画の第一の特…

フランス人であるということ/イェール「すっかり夢中」

先日、『最高の花婿』原題Qu'est-ce qu'on a fait au bon Dieu ? (2014)を鑑賞。フィリップ・ドゥ・ショーヴロン監督。『招かれざる客』以来、すでに伝統ある異人種婿・嫁物語の定石どおりの物語であり、目新しいのは4人も詰め込んだところ(だけ)と言える…

『女の一生』(2016)フランスで公開

当「えとるた日記」は http://etretat1850.hatenablog.jp に正式に移行いたしました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。 ところで、ステファヌ・ブリゼStéphane Brizé 監督の映画『女の一生』Une vie が23日にフランスで封切られた。 主演は舞台女優…

愛の根の深さ

学会の行き帰りにピエール・ルメートルの『傷だらけのカミーユ』を読む。いやはや暗いにもほどがあるのではないか、ピエール・ルメートル。ヴェルーヴェンが可哀相すぎる。思えば『その女アレックス』には、最後のところでヒロインに対するぎりぎりの同情の…

青春時代は傷だらけ

最近観た映画は、『地下鉄のザジ』と『デリカテッセン』。 どちらも十数年前に一度観た記憶は今やほとんど消えうせていたのでまことに新鮮。 (薄暗い部屋の中、14インチのテレビにレンタルビデオで借りた映画をせっせと観ていたあの頃よ、と。) 『ザジ』と…

イリュージョニスト

L'Illusionniste, 2010. シルヴァン・ショメ監督。オリジナル脚本ジャック・タチ。 私は『べルヴィル・ランデブー』を全然受け付けられないので、どうしよーかなーと 迷っていたのを、ようやく拝見しました。 これまたお恥ずかしながらジャック・タチの映画…

あわあわ

あわわわ、と言っているうちに日がどんどん過ぎる。 読み終えた電車本。 ディケンズ、『二都物語』上下、中野好夫訳、新潮文庫、1967年 主筋だけ取ると実にロマネスクでロマンチックだけれど、 フランス革命前、民衆の間で不満が高まっていくところと、 革命…

パリ20区、僕たちのクラス

Entre les murs, 2008 監督・脚本ローラン・カンテ、原作・脚本・主演フランソワ・ベゴドー。 ZEP(教育優先地区)の中学校の様子をドキュメンタリー風なタッチで描いた、パルムドール受賞作品。 とりあえず初見の印象としては、生徒達の演技があまりに自然…

リハビリ

日記の書き方も忘れてしまったこの頃。 ここしばらくの間に観た映画。 『男と女』 『TAXi』 『グラン・ブルー完全版』 『プチ・ニコラ』 『禁じられた遊び』 『まぼろし』 我ながらなんという選択。 一番印象に残っているのは結局のとこ『禁じられた遊び』だ…

レセ・パセ 自由への通行許可証

Laissez-passer, 2002 ベルトラン・タヴェルニエ監督。 これまで知らなかった作品を、たまたま見つけて鑑賞。これがすこぶる素晴らしい。 第二次大戦中占領下のフランスにおいて映画を撮り続けた男達の物語。 主役は二人のシナリオ作家で、一人はレジスタン…

君を想って海をゆく

Welcome, 2009 フィリップ・リオレ監督。 イラクからフランスまでやってきたクルド人の少年が、カレーの街で、 英仏海峡を泳いでわたるため、水泳の練習をしにプールに通うことにし、 そこで指導員をしている男に出会う。 男は奥さんと離婚するところで、で…

ぼくの好きな先生

Être et avoir, 2002 つづいてもニコラ・フィリベール監督。 オーヴェルニュのど田舎、13人の生徒と一人の先生の小学校の様子を描くドキュメンタリー。 ロペス先生が実に忍耐深く子供達を相手にしていく姿の内に、 教えることと学ぶことの原点のようなものが…

パリ ルーヴル美術館の秘密

La Ville Louvre, 1990 趣向を変えて、ニコラ・フィリベール監督のドキュメンタリー。 ルーヴル美術館の舞台裏を淡々と追った作品で、 絵画にせよ彫刻にせよ、「物」としてはかさばるし重たいし、 しかも絶対に傷つけたりできない貴重品が、全部で30万だかあ…

オーケストラ!

Le Concert, 2009 ラデュ・ミヘイレアニュ監督。 こんなに笑えるフランス映画はめずらしい。 半分ロシア映画のなせる技かもしれない。 ありえないようなお話のコメディ映画ですが、 どたばたぶりから最後の締めまで見事な腕前でありました。

モリエール 恋こそ喜劇

Molière, 2007 ローラン・ティラール監督。 若き日のモリエールを、モリエールの作品を使って描くという趣向が冴えていて、 多面的であると同時に弱みを抱えている人々の姿が鮮やかに、 見事にモリエールの世界が描かれていてお見事。 『町人貴族』と『タル…

僕のスウィング

Swing, 2002 トニー・ガトリフ監督。 ストラスブールで夏休みを過ごす少年が、 マヌーシュ(ジプシー)のおじさんにギターを習いつつ、 初恋の経験をするお話だけど、まあ筋自体はともかくとして、 これはマヌーシュの暮らしと、とりわけ彼らの音楽とを撮る…

キリクと魔女

Kiriku et la sorcière, 1998 ミッシェル・オスロ監督。 西アフリカのおとぎ話を元にしているとか。 絵柄が好みでないよなあとか思っていたのが大間違いで、 鮮やかな色彩が美しく、物語は魔女が魔女になった由縁を問う形で 単純な勧善懲悪を回避していて、…

ロシアン・ドールズ

Les Poupées russes, 2005 セドリック・クラピッシュ監督。 『スパニッシュ・アパートメント』の続編にして5年後の物語。 お馬鹿なイギリス人ウィリアムが、あんないい奴になるとは驚いた。 30になってもまだ人生定まらずにふらふらしている、という点に 個…

ピエロの赤い鼻

Effroyables Jardins, 2003 監督ジャン・ベッケル。 普通のおっさん二人組が、いいとこ見せようとレジスタンスぶって、 勢いで鉄道爆破してしまう。ところがドイツ軍は、市民四人を捕まえて、 犯人が自主しなければ彼らを殺すと宣告し、四人を穴の中に突き落…

バティニョールおじさん

Monsieur Batignole, 2002 監督・主演ジェラール・ジュニョ。 肉屋のバティニョール。娘の婚約者は対独協力者で、亡命ユダヤ人を密告し、そのお陰で ドイツ側の優遇を受けて親父さんは、本人は積極的に望んでないけれども、 豪華なアパルトマンに引っ越し、…

さよなら子供たち

Au revoir les enfants, 1987 ルイ・マル監督。 しかしまあ、ハリウッドならいくらでも盛り上げて見せようところを、 これはまたなんとも地味な、もとい「静かなトーン」の作品であることよ。 占領下のキリスト教の寄宿学校に転校してきた少年と、次第に友達…

二十四時間の情事

Hiroshima, mon amour, 1959 考えてみれば私はデュラスもアラン・レネも苦手なのであった。 筋だけとればめちゃ簡単ながら、なかなかどうしてむつかしいなあと。 戦争がもたらした体験を告白する相手が、やはり戦争で傷を負った異国の異性である ということ…

ルパン

Arsène Lupin, 2004 ジャン=ポール・サロメ監督。 私の気づいた限りでは、「女王の首飾り」「アルセーヌ・リュパンの逮捕」(されないけど) 「遅かりしシャーロック・ホームズ」(は出てこないけど) 『カリオストロ伯爵夫人』『奇巌城』が脚本に取り入れ…

WASABI

WASABI, 2001 あはははは。 いかにもチープな感じですがそこはそれなかなか面白かったじゃん、と。 フランス語話す日本人がそんな次から次に出てこんやろう、とか。 ワサビに必然性なさすぎ、とか。 モモ役のミシェル・ミューラーがいいなあ、とかとか。

ボヴァリー夫人

Madame Bovary, 1933 ジャン・ルノワールが編集した時点で3時間あったものを、誰がどう手を入れたのか 大幅に短縮されて99分。これがまたずいぶんいい加減な仕事で、とりわけ 前半のぶつ切れは、原作知ってなきゃついていけまい。ボヴァリー夫人ならそれでも…

ベティ・ブルー

37°2 le matin, 1986 インテグラル リニューアル完全版とやらは185分もあって長いんだけど 観だしたら止まらないで最後まで行ってしまう。 なんや知らぬが今のほうがぐっとよく「分かる」ように思えるのは何なのか。 こんな映画撮れたら言うことないよな、と…