えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

ベルリン・オリンピック

今読み終えたのでメモ。
デイヴィッド・クレイ・ラージ、『ベルリン・オリンピック 1936 ナチの競技』、高儀進 訳、白水社、2008年
よくもまあと思うぐらいよく調べられたベルリン・オリンピックについての本。
正直読んでいてげんなりするような話が続くのではあるが、
しかしまあ凄い。国を挙げてのプロパガンダにオリンピックは骨の髄まで
利用し尽くされたといってよろしかろう。
国を挙げてプロパガンダに利用する、という限りにおいて、その意図を
持った国のすることはどこもあんまり変わらない、という意味では、
2008年が重なってみえてしまうのも、いかんとも避けがたいように
思えるのでもあった。
アメリカをはじめ各地であったボイコット運動が成功しなかったのは
IOCあるいはブランテージが「スポーツと政治は無縁でなければならない」
というオリンピックの「理念」を通し続けることで、実現を妨げた
というのが著者の考えであり、そこにはもちろんのことドイツだけに
あったのではない反ユダヤ主義的な思想ないし感情が大きく働いていた
という点ばかりは、これ無視することはできない。カール・ディームの
存在も含めて、つまるところIOCという組織はどうにも自己批判に欠ける。
しかしまあベルリンの「大成功」がその後の歴史にどれだけの
影響を及ぼしたのかの測定は容易ではないし、著者も節度を
守って不用意な断言は慎んでいるのではある。
しかしまあ、それにしてもなんとまあという530頁でありました。