しばらく前にFさんにご教示いただいたもの。
二一
昔の日
野ばらのついた皿
廃園の昼食
黒いてぶくろ
マラルメの春の歌
草の葉先に浮く
白玉の思ひ出
無限の情
(西脇順三郎、『旅人かへらず』(1947)、『Ambarvalia / 旅人かへらず』、講談社文芸文庫、1995年(2011年4刷)、112-113頁)
はて、「マラルメの春の歌」ってどれだろう。
二二
あの頃桜狩りに
荒川の上流に舟を浮べ
モーパッサンを読む
夕陽に蘆の間に浮かぶ
下駄の淋しき
(同書、113頁)
やはりボートとの関連でモーパッサンなんでしょうか。俳句みたい。
ずっと飛んで、こちらは前半のみ引用。
一五七
旅に出る時は
何かしらふところに入れる
読むためではない
まじなひに魔除けに
ある人は昔
「女の一生」を上州へ
ある国の革命家は
「失はれた楽園」を
野の仕事へ
(同書、184-185頁)
『女の一生』を携えて群馬県に行ったのは、特定の誰かなのかな。
しかしそれは何の「まじない」であろうか。まさか「魔除け」?
まさかねえ。