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えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

BD『ポリーナ』/ザジ「愛の前に」

BD シャンソン・ヴァリエテ

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 一言で言えば、とっても絵が上手。

 バスティアン・ヴィヴェス『ポリーナ』、原正人訳、小学館集英社プロダクション、2014年

 1984年生まれのこの作者には先に出世作

 『塩素の味』、原正人訳、小学館集英社プロダクション、2013年

の翻訳があり、カラーの画面の中に、プールの水とその中を動く人体が見事に表現されていて、その画力はすでに証明済みだった。『ポリーナ』の方は全編白黒、200頁をかけて一人のバレエダンサーの成長を辿る力作である。

 ロシア人のポリーナは幼少時からアカデミーに通い、そこで厳しい指導で有名な教師のボジンスキーの目に留まる。卒業後は選ばれて劇場の付属学校に進学するが、そこでは、ボジンスキーとは流儀の異なる女性教師のリトゥスキーの指導に馴染むことができない。一方でそのボジンスキーからは、彼の自作のソロを踊らないかと提案されて稽古が始まる。そうこうしている中、恋人や友人たちと旅行でダンスのフェスティバルを観に行くのだが、そこでコンテンポラリー・ダンスの振付師ミハイル・ラプターからオーデションを受けないかと誘われる。そしてそこから、それまでは思ってもみなかった新しい道が開けてゆくことになる……。紆余曲折を経た後に思わぬ形で成功を収め、はじめて故郷に帰るまでのポリーナの半生が丁寧に語られている。

 絵は墨絵のようなタッチで描かれ、しばしば背景を省略して人物だけが描かれるが、とにかくデッサン力がしっかりしていて、人物の姿勢や表情が的確に捉えられているところが素晴らしい。一コマ一コマに安定感があり、視線を惹きつける魅力があるのだ。もちろんそのことは、肝心要のバレエの動作やポーズについても言える。繊細で、躍動感があり、美しい場面が展開してゆく。『ポリーナ』は、『塩素の味』にも増して、芸術性の高い作品である。

 画面の切り取り方や、人物の内面に入り込まずに淡々と物語る姿勢は、とても映画的だと言ってよいだろう。このまますぐに映画化もできそうだ、と思ったのだが、実際にもう映画化されたらしく、Polina, danser sa vie 『ポリーナ、自分の人生を踊る』という題で2016年に公開されている。作者自身が学校でアニメーションを学んだ経験があるそうなので、そのことも大きく影響しているだろう。

 奇をてらうことないままに、堂々と200頁を堅実に描き切るところに、一層この作家の才能の確かさが見て取れるようだ。ぜひ他の作品も読んでみたいと思っている。

 

 Zazie ザジの2010年の7枚目のアルバムは Za7ie (読めない)。本来は7曲入りのEPを7週間かけて毎週出すという大がかりな作品だった(私はダイジェストの14曲入りのCDしか聴いていない)。その中の一曲、"Avant l'amour" 「愛の前に」。ダンスのように美しいPV。

www.youtube.com

Combien de jours avant l'amour

Combien de fois dans une vie

C'est con

C'est qu'on fait tout pour

Se détourner de lui

Combien de jours avant l'amour

Combien de jours on se donne

Sans faire de mal à personne

C'est quand l'amour ?

("Avant l'amour")

 

愛の前に どれだけの日がいるの

一度の人生に 何度あるの

馬鹿げてる

愛から遠ざかるために

あらゆることをするなんて

愛の前に どれだけの日がいるの

誰も傷つけることなしに

どれだけの日を与えあうの

愛はいつなの?

(「愛の前に」)