えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

ペシミスティック

若干、昨日の続き。
哲学的真理の探究というそれ自体もっとも人間的なはずの試みに専心した結果、動物の境遇に身を落とすという逆説。
『エラクリウス・グロス博士』もまた、人間と動物との関係を問題にしている。そこで思い出すのは次の言葉。

Faut-il être aveugle et soûl de fierté stupide pour se croire autre chose qu'une bête à peine supérieure aux autres !
他の動物よりたいして優れてもいない動物以外の何物かであると自分のことを信じるには、盲目であるか、愚かな傲慢さに酔い痴れていなければなるまい!
Sur l'eau, in Maupassant, Carnets de voyage, édition établie par G. Delaisement, Rive Droite, 2006, p. 254.
『水の上』、「4月7日午後9時、カンヌ」

暗い、とおっしゃる? ペシミスティックとおっしゃる?
私が思い出すのは笠原メイの台詞だ。

「私はまだ十六だし、世の中のことをあまりよくは知らないけれど、でもこれだけは確信をもって断言できるわよ。もし私がペシミスティックだとしたら、ペシミスティックじゃない世の中の大人はみんな馬鹿よ」
村上春樹ねじまき鳥クロニクル』「第1部 泥棒かささぎ編」新潮文庫、2007年(28刷)、211ページ。

そして彼女はこ言うのである。

「ねえ、ねじまき鳥さん」と彼女は静かな声で言った。「考えなさい。考えなさい。考えなさい」。
同、「第2部 予言する鳥編」新潮文庫、2007年(24刷)、169ページ。

かくしてリアリストはいつも内省を求めるのである。