えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

リュパン対ホームズ

モーリス・ルブラン、『リュパン対ホームズ』、石川湧 訳、創元推理文庫、2000年(53刷)
エルロック・ショルメスをいつから「ホームズ」と訳すようになったのか
事情がよく分からないのが気になるところで、ルブルランはそれほど
本家を意識していたかどうか疑わしいほど、本物と似ていない「ホームズ」
ではある。お馬鹿な忠犬さながらのウィルソンは哀れすぎよう。
つまるところ、粗野で無骨で友人も顧みない傲慢なホームズ
vs 優雅でディレッタントで女性に優しいリュパン、という対比に眼目があれば
たとえ勝負は互角であったにせよ、美学的見地からすればリュパン
圧倒的な軍配があがるわけであり、
そこにルブルランの自負するところの「フランス人らしさ」
というものがある、ということなのであろう。
中学生の頃だかに子供向けの版で読んだ時にはなんちゃ
よう分からなかった記憶があるのも、要するにリュパンものの面白さは
なかなか「大人向け」のものであった、ということか。