えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

シャンソン・ヴァリエテ

『エマは星の夢を見る』/ジュリエット・アルマネ「アレクサンドル」

これはBDではなく漫画だけれど。 Emmanuelle Maisonneuve / Julia Pavlowitch 原作、高浜寛『エマは星の夢を見る』、講談社、モーニングKC、2017年 エマニュエル・メゾンヌーヴさんは、あのミシュランガイドの調査員を務めていて、本作は彼女の実体験を基に…

『バンド・デシネ 異邦人』/ジュリエット・アルマネ「インディアン」

アルベール・カミュの『異邦人』。有名だし、そんなに厚くないし、と思って気楽に手に取ると、前半はなんだかけっこう退屈だし、後半はなんだか難しく、なんだか訳が分からないまま終わるんだけど、なんだか大事なことが書いてあるような気はする、という「…

「19世紀における文学と民衆文化」/ジュリエット・アルマネ「愛の欠如」

信州大学国際シンポジウム2018「19世紀における文学と民衆文化―フランスを中心として―」 | お知らせ | 信州大学 人文学部 12月2日に信州大学で開催される国際シンポジウム「19世紀における文学と民衆文化 ―フランスを中心として―」のチラシ(勝手に転載しま…

『三つの物語』/ジュリエット・アルマネ「独りの愛」

今になって改めて『ボヴァリー夫人』を読み直すと、フロベールが自分の登場人物を甘やかさないためにどれだけ必死になっていたかが、しみじみとよく分かる(ような気がする)。彼はエンマやレオンやロドルフやオメーにせっせと「紋切型」をしゃべらせる。そ…

「対訳で楽しむモーパッサンの短編」第3回/ジュリア「S.E.X.T.O」

『ふらんす』12月号に、「対訳で楽しむモーパッサンの短編(3) ソヴァージュばあさん①」が掲載されました。普仏戦争を題材とした作品です。コラムは「モーパッサンと戦争」、手に取ってご覧いただけましたら有難く存じます。 2018年9月、ミレーヌ・ファルメー…

「対訳で楽しむモーパッサンの短編」第2回/ミレーヌ・ファルメール「忘れないで」

『ふらんす』11月号に、「対訳で楽しむモーパッサンの短編 (2) 宝石②」、順調に掲載されました。今月が完結編になります。コラムは「「宝石」と「首飾り」」。手に取ってご笑覧頂けましたら嬉しく思います。 我らがミレーヌ・ファルメール Mylène Farmer の…

「対訳で楽しむモーパッサンの短編」第1回/クリス「ああ、言ってよ」

『ふらんす』、2018年10月号より、6回にわたって、「対訳で楽しむモーパッサンの短編」を連載することになりました。1回4ページ。 せっかくなのでモーパッサンの一番良いところが詰まった作品を紹介したいと思い、最初の2回は「宝石」"Les Bijoux"を取り上…

『収容所のプルースト』/ミレーヌ・ファルメール「ローリング・ストーン」

ジョゼフ・チャプスキ『収容所のプルースト』、岩津航訳、共和国、2018年を読む。 チャプスキ(1896-1993)はポーランド出身の画家・作家。戦後はフランスに滞在しつづけた。 彼は1939年にソ連の捕虜となり、スタロビエルスク、次いでグリャーゾヴェツ捕虜収…

『モーパッサンの修業時代』書評掲載/グラン・コール・マラード「赤信号で」

『図書新聞』、第3339号、2018年2月17日付に、倉方健作氏による拙著『モーパッサンの修業時代 作家が誕生するとき』についての書評が掲載されました。やれ嬉しや。この場を借りて感謝を申し上げたいと思います。 前半は主に著書の内容の紹介。後半部の一部分…

『ルーヴルの猫』/ディオニゾス「愛のヴァンパイア」

ルーヴル美術館に隠れて暮らす猫たちがいる。その中の一匹、オッドアイの白猫「ゆきのこ」は、いつまでも子どものまま、他の猫たちとも打ち解けることができずに、自分の居場所を探している。 その猫たちの世話をしている夜警マルセルは、ガイドの仕事に馴染…

「ひげの女」ほか翻訳/ミレーヌ・ファルメール「ストウルン・カー」

モーパッサンの若かりし頃の笑劇『バラの葉陰、トルコ館』を訳したのを機に、合わせて訳してしまおうと思い立った詩篇が三つ。 モーパッサン「ひげの女」 モーパッサン「我が泉」 モーパッサン「69」 1881年、ベルギーで地下出版された『19世紀の新サチュロ…

『バラの葉陰、トルコ館』翻訳公開/アルバン・ドゥ・ラ・シモーヌ「偉大なる愛」

本日、モーパッサンおよび仲間たちの共作による一幕散文劇『バラの葉陰、トルコ館』の翻訳を公開。 モーパッサン『バラの葉陰、トルコ館』について モーパッサン 『バラの葉陰、トルコ館』 私の知る限り、日本語の紹介としては、種村季弘の一文(初出1974年…

エッフェル塔に反対する芸術家たち/フランス・ギャル「エラ、彼女はそれを持っている」

先日のエッフェル塔の話の続き。 モーパッサンが加わったというエッフェル塔反対の抗議文書はいったいどういうもので、誰が署名していたのだろうか。 ということが気になったので、当時の新聞を幾つか見てみる。中では『タン』紙、1887年2月14日の記事が、抗…

『寛容論』の中の日本人/ザジ「すべての人」

キリスト教徒がお互いに寛容でなければならないのを立証するには、ずば抜けた手腕や技巧を凝らした雄弁を必要としない。さらに進んでわたしはあなたに、すべての人をわれわれの兄弟と思わねばならないと言おう。なに、トルコ人が兄弟だと、シナ人、ユダヤ人…

『時制の謎を解く』/ジョイス・ジョナタン「今時の女の子たち」

フランス語には時制が多い。それは確かに認めざるをえない事実だ。複合過去に半過去に大過去に前過去があって、前未来ってなんだっけ……、というのは学習者が一度は通らなければならない道だろう。 それにしてもなんでこんなに多いんだ、と多くの人が一度は疑…

『風から水へ』/クロ・ペルガグ「凶暴サタデーナイト」

縁あって拙著を出版していただいた水声社の社主の(インタビューによる)回想 鈴木宏『風から水へ ある小出版社の三十五年』、論創社、2017年、を読む。 とくに後半では学術関連の書籍出版の実態が詳しく語られていて、私も他人事とは言えないのでたいへん興…

『ファントマ』書評/クロ・ペルガグ「磁性流体の花」

ご縁あって『図書新聞』第3321号(2017年10月7日)に、ピエール・スヴェストル、マルセル・アラン『ファントマ』、赤塚敬子訳、風濤社、2017年の書評を書かせていただく。せっかくなので、冒頭の2段落を引用。 犯罪大衆小説の古典、本邦初の完訳 シュルレア…

「十九世紀における小説の進化」/ジョイス・ジョナタン「幸福」

昨日はモーパッサンの誕生日。 それより数日前に翻訳を一つ仕上げる。 モーパッサン 『十九世紀における小説の進化』 また文芸論を訳してしまった。 『1889年万国博覧会誌』に載ったこの記事には挿絵が2枚あって、1枚はこのルイ・ブーランジェによるバルザッ…

BD『青い薬』/ヴァネッサ・パラディ「ラヴ・ソング」

フレデリック・ペータース『青い薬』、原正人訳、青土社、2013年 原著の刊行は2001年。これは、好きになった女性(とその連れ子)がエイズ患者だった男性の物語であり、本書は、90年代以降に書かれるようになった自伝的BDの代表作の一つに数えられているとい…

BD『ムートン(羊)』/ヴァネッサ・パラディ「ミ・アモール」

Zeina Abirached, Mouton, Cambourakis, 2012. 『オリエンタルピアノ』がすごく良かったので、同じ著者の別の本を覗いてみた。 ゼイナ・アビラシェドの『ムートン(羊)』は、正確にはBDというよりも絵本であり、もともとは、国立高等装飾美術学校在籍時に制…

BD『タンタン ソビエトへ』カラー版/ザジ「私はそこにいた」

2017年はロシア革命100周年にあたるが、それを記念して(?)『タンタン ソビエトへ』がフルカラーとなって刊行された。 Hergé, Les Aventures de Tintin reporter chez les Soviets, Casterman, Editions Moulinsart, 2017. タンタンの冒険シリーズの最初の…

BD『ペルセポリス』第1巻/ヴァンサン・ドゥレルム「僕は今晩死にたくはない」

マルジャン・サトラピ『ペルセポリスI イランの少女マルジ』、園田恵子訳、バジリコ株式会社、2005年(2014年第8刷) 原作(1, 2巻)が2001-2002年に刊行された時は、ラソシアシオンという独立系出版社による刊行、(従来のフルカラーとは違う)白黒の画像…

BD『星の王子さま』/パトリシア・カース「アデル」

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ原作、ジョアン・スファール作『星の王子さま』、池澤夏樹訳、サンクチュアリ出版、2011年(2015年第2刷) 今さら言うまでもなく、『星の王子さま』の原作には著者サン=テグジュペリ自身の手になる挿絵が添えられてお…

BD『エロイーズ』/ザジ「エートルとアヴォワール」

ペネロープ・バジュー&ブレ『エロイーズ 本当のワタシを探して』、関澄かおる訳、DU BOOKS、2015年 はじめブログで評判になったこの著者の翻訳としては、先にアラサー女性の冴えない日常を自虐的に1話1頁で綴った、 『ジョゼフィーヌ!』、関澄かおる訳、DU…

BD『ポリーナ』/ザジ「愛の前に」

一言で言えば、とっても絵が上手。 バスティアン・ヴィヴェス『ポリーナ』、原正人訳、小学館集英社プロダクション、2014年 1984年生まれのこの作者には先に出世作の 『塩素の味』、原正人訳、小学館集英社プロダクション、2013年 の翻訳があり、カラーの画…

抹消された α と β /イズィア「波」

2月11日(土、祝)は関西マラルメ研究会@京都大学文学部仏文研究室。4名。 「部屋からの外出」に関する草稿の内のアルファ稿、およびベータ稿の途中まで。プレイヤッド版では851-853ページ。 閉まるドア、振り子の音、廊下、磨かれた壁に映る影、螺旋階段、…

BD『かわいい闇』/ストロマエ「パパウテ」

この作品を好きだと言う自信も、そのつもりもまったく無いのだけれど、一読、その気色悪い感触が尾を引くことは確かな、どうにも無視できない作品である。 マリー・ポムピュイ、ファビアン・ヴェルマン作、ケラスコエット画『かわいい闇』、原正人訳、河出書…

モーム「赤毛」/イェール「子どものように」

「雨」の次は「赤毛」である。これまた嫌な話ではあるのだが、しかし完成度という点では、私は「雨」よりもこちらを取りたいと思う。 舞台はサモアの小さな島。まず、語りの順序とは無関係に話の要点を簡略に記せば、おおよそ次のようになるだろう。 アメリ…

BD『オリエンタルピアノ』/ジュリアン・ドレ「崇高にして無言」

こんな作品にいち早く目を止めて、翻訳・紹介できたらきっと誇らしいだろうと、そんな風に思わせる作品が時々あるものだが、この ゼイナ・アビラシェド『オリエンタルピアノ』、関口涼子訳、河出書房新社、2016年 は、私にとってまさしくそうした一冊である…

モーム「雨」/ミレーヌ・ファルメール「ブルー・ブラック」

考えてみるまでもなく、モーパッサン好きがモームを好きにならないはずもない、というものなのだが、これまで読む機会がなかったサマセット・モームをできるだけ読む、というのが私の今年の目標である。 サマセット・モームは1874年に生まれ(ヴァレリーより…