えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

2010-01-01から1年間の記事一覧

岸田國士「二人の友」

『モオパッサン 二人の友』、岸田國士訳註、白水社、仏蘭西文学譯注叢書第一篇、1925(大正14)年 岸田國士がパリ留学中に日本に原稿を送ったが紛失、 関東大震災の後、白水社で発見され、出版となった、 と、「巻頭言」に内藤濯が記している。 ついでながら…

大雨にあう

大雨にうたれる。 本業はなかなか進まないので困ったものだが、 せっかくなので、とっちらかってどこか行ってしまう前に (実はすでにいきかけた)本の話をしておこう。

小林天眠と天佑社

さて天佑社に関して、Kさんにご教示いただいた本。 真銅正弘 他編、『小林天眠と関西文壇の形成』、和泉書院、2003年 小林天眠(本名政治、1877-1956)は兵庫出身の実業家。 明治30年から33年『よしあし草』、改題して翌年まで『関西文学』に関わり、自身も…

昼夜転倒

土曜日、Ego-wrappin'。 以降、本業。 1880年から81年前半にかけてのモーパッサンの時評文を読み返す。 ほんの数カ月のうちに、クロニックのスタイルをしっかり身につけ、 ユーモアと皮肉あふれる時評文が書けるようになるのは、 さすがと言うよりないなあと…

Mathieson『女の一生』

A Woman's Life, by Guy de Maupassant. Translated from the Latest French Edition, London : Mathieson & CO., LTD., n. d. 「食後叢書」ことAfter-Dinner Series を出していた Mathieson (これはマシエソンと読むのでよろしいのですか) からは Bel-Ami…

採点終了

天佑社については宿題として、 お次は名古屋の本屋さんから届いたもの。 これが凄い。

写実主義の極致

2日会議。夜、鶏づくし。 昨日から採点期間に入るが、嫌いな仕事なので逃避多し。 ふらふらと訪れた古本屋さんのサイトで、 『モウパッサン全集 第二篇 生の誘惑 他十五篇』、前田晁譯、天佑社、大正9年10月17日発行(同年12月18日5版) 同、『第三篇 戀の力…

壮麗にして混濁した

月一マラルメ。 1898年刊行『ヴァスコ・ダ・ガマへの記念アルバム』所収。 8音節、エリザベス朝式ソネ。 壮麗にして混濁したインドを越えて 旅するという唯一の関心に向けて ――この挨拶が、君の船尾が越えていく岬 時を告げる使者たらんことを あたかも、カ…

モンスーン・ウェディング

Monsoon Wedding, 2001 ミラ・ナイール監督。 長女の結婚式を前に、一族が集まり、 お父さんは借金して伝統的な豪華な式を準備しつつ、 長女は実は不倫の関係を清算しきれておらず、 いとこ同士の出会いがあったり、 プランナーのお兄さんの清純な恋があり、…

校正の日

Ego-wrappin' 聴きながら一日校正。

ジョイ・ラック・クラブ

The Joy Luck Club, 1993 監督ウェイン・ワン。 アメリカに移住してきた4人の女性と、彼女達それぞれの娘、 計8人の人生と、母娘の関係が語られる。 中国でそれぞれに辛い経験をしてきた母親達は、娘の幸せを何より願うが、 娘達は娘達で、母親達が思いもし…

詩の朗読

金曜日りんくうタウン。 土曜日、京都芸術劇場・春秋座にて『マラルメ・プロジェクト』鑑賞。 第一部は松浦寿輝『喫水都市』朗読(松浦寿輝、浅田彰、渡邊守章)と 渡邊守章による『エロディアード―舞台』『半獣神の午後』日本語による朗読。 第二部はマラル…

ひげ文字を眺める

とにかく、あと一週。 Sacher-Masoch, Soziale Schattenbilder: Aus Den Memoiren Eines Österreichischen Polizeibeamten, Halle: Hermann Gesenius, 1873 (Nabu Press, 2010). ザッヘル=マゾッホ、『社会のシルエット オーストリアのある警官の覚え書きよ…

ザッヘル=マゾッホ追記

種村季弘、『ザッヘル=マゾッホの世界』、平凡社ライブラリー、2004年 を改めて見返したら、「マゾッホ文献について」の341頁に、 木村毅訳について書かれており、おまけに「カテリナ二世」についての逸話、 私の引用したのと同じとこが引用されておるでは…

マゾッホ英訳

ザッヘル・マゾッホ、『マゾッホ情艶小説集』、木村毅 訳、白凰書院、1949年 なんていう本がありまして、他の版もあるが、中身は同じと考えてよかろう。 その「序」にいわく、 本譯のテキストにはマシイソン版の英譯を用ゐた。原作には當局の忌憚に觸れるや…

いまいちど偽作の方へ

あっという間に1年が経ち、ふらふらと舞い戻ってきた話。

ナポレオン伝説とパリ

杉本淑彦、『ナポレオン伝説とパリ 記憶史への挑戦』、山川出版社、2002年 軍人には何の関心もないので、ナポレオンその人には興味が湧かないのだけれど、 しかし19世紀フランスにおいて、「ナポレオン」はやはり無視できないね、 と、今さらのことを今さら…

Your book has shipped

毎日、生きていくだけで精一杯。 ひさしぶりにアメリカの古書店から本を買い(3ドル)、 Your book has shippedというメールが届く(送料が7ドル)。 最初にこの字を見た時は、これは「出荷した」という文句なんだろう、 と思ったのだけれど、待てど暮らせど…

ヴェルレーヌのお墓

土曜日マラルメ。 1897年元旦、『ルヴュ・ブランシュ』掲載。 これはほんまにむずかしい。てか分からへん。 墓 命日――1897年1月 黒き岩、北風に転がされて憤り 敬虔なる手の下にても止まりはしない 人間の苦難との類似を手探りし その不吉なる鋳型を祝福する…

ワーニャ伯父さん/三人姉妹

チェーホフ、『ワーニャ伯父さん/三人姉妹』、浦雅春 訳、光文社古典新訳文庫、2009年 なんのことはない、ここに出てくる人たちは皆そろって、 「よりよく生きたい」という想いに胸焦がれている、といってよかろう。 今とは違った人生に対する理想と、それ…

翻訳しました

おもむろに宣伝です。 ジャック・タグラン、「TRANSAT 大西洋横断ヨットレース 歴史、挑戦、そして伝説(1866-1905)」、足立和彦 訳、Sea Dream, vol. 11, 舵社、2010年6月、94-99頁 昨年のご縁で、翻訳のお仕事を頂きました。 大西洋横断ヨットレースは、豪…

珈琲をぶちまける

だいたい2年に一度ぐらいやらかしてしまうのであるが、 今日、朝っぱらからコーヒーをどかーんとぶちまけてしまい、いやもう修羅場であったことよ。 我がパソコン、フリッツ君が無事であったのは、不幸中の幸いであった。 『ヴィアン伝』ほか、被害数点。い…

ボリス・ヴィアン伝

寝る前本を読了。 フィリップ・ボッジオ、『ボリス・ヴィアン伝』、浜本正文 訳、国書刊行会、2009年 終戦から残りの40年代までだけで、記述は全体の三分の二ぐらいに至ると思うのだけど、 ほんの五年足らずの間に『日々の泡』はじめの小説を書き、ヴァ―ノン…

雨の週末

書きたいことは色々ありながら、ままならないこの頃。 たとえば、足元に転がってるこんな本、 Gustave Flaubert - Guy de Maupassant, Correspondance (1873-1880), édition présentée, établie et annotée par Sylvain Kerandoux, La Part Commune, 2009. …

ともしび・谷間

チェーホフ、『ともしび・谷間』、松下裕 訳、岩波文庫、2009年 「曠野」以降の後期の傑作ぞろい。 ニヒリズム世代を問題にした「ともしび」 人を見る目を持たなかった女を描く残酷な「気まぐれ女」 「箱に入った男」「すぐり」「恋について」の三連作、 地…

中間テスト

今週は中間テスト。 こういうものは、やらされるほうが大変なのはもちろんながら、 やるほうもなかなか手間かかるのよ。 と今になって思うが、私とて学生時代は当然ながら そんなもん知ったことではなかったので、 これぞまさしく、因果は巡る風車。違うか。

Mon anniversaire

ついに 『マラルメ全集 1 詩・イジチュール』、筑摩書房、2010年 を入手する。が、たまたま、今日は私の誕生日であった。 これでは、まるで自分へのご褒美みたいではないか。 まるで大学2年くらいの仏文学徒みたいではないか。 それでいいのか。まあ、いいけ…

歴史がつくった偉人たち

長井信二、『歴史がつくった偉人たち 近代フランスとパンテオン』、山川出版社、2007年 1885年にヴィクトール・ユゴーが亡くなった時、 彼の遺体をパンテオンに納めるかどうかで議論があって、 モーパッサンはそれを話題に記事を一本書いている モーパッサン…

ユゴーの貫録、とゴロワズリ

竜之介さん楽しいコメントありがとうございました。 その手の艶笑譚はおーむかしからあって、 下ネタで権威的なものを笑いものにするというのが、 健全な?庶民の知恵だったんですねえ。 『エプタメロン』にもそんな話があったような、遠い記憶。 フランスで…

六号病棟・退屈な話

今年が生誕150年だからなのか、どうなのか、 ここのところ文庫本にチェーホフが溢れているようで。 チェーホフ、『子どもたち・曠野』、松下裕 訳、岩波文庫、2009年 は、読み終えてすでに久しい。 濫作作家チェフォンテが、心機一転力を込めて書いたという…