えとるた日記

フランスの文学、音楽、映画、BD

モーパッサン

『今日の人々』のモーパッサン

鹿島茂・倉方健作、『カリカチュアでよむ19世紀末フランス人物事典』、白水社、2013年 刊行を寿ぎ、勝手に便乗企画を立てました。 ピエールとポール 『ギ・ド・モーパッサン』 件の『今日の人々』の第246号、「ピエールとポール」の手になる モーパッサンに…

フランス自然主義文学

おもむろに宣伝させていただきます。 アラン・パジェス、『フランス自然主義文学』、足立和彦訳、白水社、文庫クセジュ、2013年5月 もうすぐ刊行です! Q980 フランス自然主義文学 - 白水社 この際アマゾンもはっつける。 Amazon CAPTCHA はるか以前から出し…

『ベラミ』映画公開に寄せて

人、それを便乗と呼ぶのであるが、 なにはともあれ、映画『ベラミ』の日本公開を祝いたい。 http://www.belami-movie.info/index.html フランス語でやれ、と言っても仕方ないし。 さて、素晴らしいのは映画化の波及効果である。 (波及効果で仕事が回ってく…

モーパッサンのお墓に

夏の終わりに、モンパルナス墓地にある、 モーパッサンのお墓にお参りしておこう。 この夏の個人的課題は、日刊紙『ジル・ブラース』を読むことだった。 1881年末にモーパッサンが寄稿を開始した時、 紙上ですでに活躍していた作家の中心メンバーはテオドー…

モーパッサンの石像に

あちこちに頭を下げてばかりいると モーパッサンに怒られるというか 呆れられそうな気がしないでもないので、 モンソー公園のモーパッサン像。 なにやら子どもがおったり、 頭に鳩がとまったりしてますが、 みんなに愛されるモーパッサン、 ということにして…

パリ、モーパッサン通り

マルモッタン美術館から徒歩で10分くらいのところ、16区の閑静な住宅街の中に、ギ・ド・モーパッサン通りがある。 別にモーパッサンと縁があった場所でもないのだけれど。 長さ90メートルほどの短い通りで、何があるわけでもないが、パリに住めるものならこ…

ラ岬

ブルターニュへさらに思いを込めて翻訳しました。 http://www.litterature.jp/maupassant/chronique/chro21fev1883.html お読みいただければ幸甚です。 (いつもの記述だと文字化けするのでどこかに問題があるやもしれぬ。 文字コードは今もってよく分からな…

モーパッサンとブルターニュ

6月30日がマラルメ。「エロディアード」を読み終える。ばんざい。 最後8行がどんでん返しだったのね。 そこに至って、エロディアード自身の内面に葛藤があることが暴露される。 だとすれば、劇作品としては、この作品はそこからこそ始まるはずのものではなか…

太宰治「富岳百景」のモウパスサン

「モウパスサンの小説に、どこかの令嬢が、貴公子のところへ毎晩、河を泳いで逢いにいったと書いて在ったが、着物は、どうしたのだろうね。まさか、裸ではなかろう。」 「そうですね。」青年たちも、考えた。「海水着じゃないでしょうか。」 「頭の上に着物…

改めて、簡単なのか

モーパッサンのフランス語は(少なくとも相対的に)簡単だ。 と断言すると、しかしなんとはなしに疾しい気分がしないでもない。 「モーパッサン先生」に怒られそうな気もするし。ははは。 Maupassant par les textes にThierry Selva 氏による、 Une étude q…

フランス語で読むこと

モーパッサン関係の最近のトピックのもう一つは、 佐藤若菜、『フランス語で読むモーパッサン 対訳ジュールおじさん・首飾り・シモンのパパ』、NHK出版、2011年 でありました。 こういう需要があるのは大変喜ばしいことである。 この本が目新しく見えるの…

まんがで読破すること

いかん、もう四月だ。どうしよう。 今更な話ではあるが、 バラエティ・アートワークス、『まんがで読破 女の一生』、イースト・プレス、2012年 を本屋で見かけた時はおどろいた。 190頁で主要なところはきっちり描いて、その職人芸は見事なものです。 なかな…

11ヶ月ぶりの翻訳

時間があるのかないのかよくわからないこの頃、 思いたって翻訳を仕上げる。 モーパッサン 『時評文執筆者諸氏』 自身、新聞紙上で「時評文執筆家」であり小説家でもあったモーパッサンが、 両者の性質の相違を説いた後に、当時の一流時評文書き4名を紹介す…

妹はジョルジェット

K-Aさま、コメントをどうもありがとうございました。 こちらこそ今年もよろしくお願いもうしあげます。 試しにツイートしてみたのですが、埋もれてしまったかもしれません。 ルブランの出生証明書、原文トランスクリプトしてみましたので、 よろしければメー…

モーパッサン、アグレガシオンの課題に

一月前。おお大変だ。 すでに旧聞に属するけれども、 10月号の『マガジン・リテレール』はLe Mystère Maupassant「謎の人モーパッサン」と題する モーパッサン特集号であった。 これは来年のアグレガシオン(中高等教育教授資格試験)の課題図書の中に、 『…

旅人かへらず

しばらく前にFさんにご教示いただいたもの。 二一 昔の日 野ばらのついた皿 廃園の昼食 黒いてぶくろ マラルメの春の歌 草の葉先に浮く 白玉の思ひ出 無限の情 (西脇順三郎、『旅人かへらず』(1947)、『Ambarvalia / 旅人かへらず』、講談社文芸文庫、1995…

ニヒルなひと

今日、ふと「ああこれがニヒリズムということなのか」と納得してしまったので、 そのことを記す。 モーパッサンの作品について考えていると、その大きな特徴として 価値の相対化というものに突き当る。 モーパッサン、あるいは極めつけの相対主義者。 そこに…

オブセッションがいっぱい

竜之介さん、ペレンナさん、コメントをどうもありがとうございます。 風邪のことまでどうもどうも、お恥ずかしい限りです。 昨年の冬にFさんに「手洗いうがいをちゃんとしてたら風邪なんか引かないんだよ」 と力づよく断言いただきまして、「おおそうか」と…

モーパッサンと渡辺一夫

『渡辺一夫評論選 狂気について 他二十二篇』、大江健三郎・清水徹編、岩波文庫、1993年(2010年8刷) を読むと、戦後すぐ、冷戦の始まった頃に渡辺一夫がすごく怒っていることが分かる。 終わったと思えば、またぞろ戦争をする気なのか、と。 16世紀フラン…

レアリスムじゃないかも

日記を書く余力のないまま日がどんどん過ぎる。 6日慶事で関東遠征。 この一月ばかりの間に二度風邪を引いたので、 一度目で『Xの悲劇』、二度目で『Yの悲劇』を読み、 遠征の行き帰りに『Zの悲劇』(いずれも越前敏弥訳、角川文庫)を読み、 勢いで『レーン…

ジュリヤンについて

なんか目の覚める曲でもないじゃろか、と思ってさ迷ううちに、 Michel Delpeche, "Pour un flirt"(邦題「青春に乾杯」)に辿りつく。 目は覚めたが、腰がくだけた。 引き続き『女の一生』。 ジャンヌの夫ジュリヤンについて、あんまり誰もものを言っていな…

あるいはカンディード

誕生日。 なにかよいことはないかと思って、『舞踏会の手帖』を観る。渋い選択だ。 オムニバスの各篇いずれも味わい深いが、それにしても人生観、苦み走りまくり。 これぞ古き良き大人の映画かな。 相変わらず『女の一生』。 「無垢」な状態にある人物が、そ…

ジャンヌの父

週末、東京に。色々あった。 先日、『女の一生』のジャンヌはルソー的な「野性人」だと記してみたが、 それってつまりは『人間不平等起源論』ということなのか。 ところで、もちろん、ジャン=ジャックの名前は『女の一生』の冒頭に書き込まれているのである…

タイトルの語ること

精神的にゆとりがないとブログなんて書けないわ。 とかなんとかぶつぶつと。 おもむろに『女の一生』のタイトルを考える。 原題Une vie はどうしたって「ある一生」「一つの人生」という意味である。 身も蓋もないタイトルだ。 『ボヴァリー夫人』に倣うなら…

あらためてマンデス

仕事開始の前日。多少なりと緊張します。 たびたび名前が出てきたので、『エコー・ド・パリ』のマンデスの回答も訳しておこう。 Ce qu'il faut admirer avant tout, me semble-t-il, en Guy de Maupassant, c'est le parfait équilibre entre le pouvoir et …

マルセル・バイヨとアドルフ・レッテ、とマラルメ

ようやく最後まで来る。 La paralysie générale vient de foudroyer une des plus belles intelligences de ces temps-ci. Guy de Maupassant, héritier direct de Gustave Flaubert, ne fit que passer parmi les disciples de Médan, et de suite, il cher…

ピエール・キヤールとレオン・デシャン

Parmi les écrivains strictement naturalistes, seul peut-être, M. de Maupassant eût le sens de la beauté verbale et du rhythme supérieur : il parle quelque part du mystérieux frisson qui saisit les initiés à la lecture de telles strophes de…

モーリス・ポッテシェールとルイ・ル・カルドネル

Parmi les fausses monnaies, sa langue claire et grave sonnait la loyauté ; c'est par elle qu'on entendra vivre tout ce que l'écrivain a écouté de la vie. Les élections académiques, le message des « Cigognes », l'assaut des mages ne console…

モーリス・ボーブールとピエール・ヴェベール

Maupassant eût continué son œuvre qu'il eût achevé de quitter ces malheureux naturalistes, qui n'ont décidément que des fonctions !... Il eût laissé leur domaine aux sciences physiques destinées à l'amélioration des calorifères, et eût mon…

ジュリヤン・ルクレール

J'aime la prose lorsqu'elle est composée par les poètes. Je n'aime pas les vers lorsqu'ils sont l'œuvre d'un prosateur. Voilà pourquoi je n'aime ni la prose, ni les vers de M. Guy de Maupassant. – Julien Leclercq. (L'Écho de Paris, supplém…